★『Capricious』★ 2024年(令和 6年) 11月号 12月号
●「国際政治 81」
マイクロソフト(WindowsのOS) の創業者である大富豪のビル・ゲイツ(69歳)
と、赤坂にある料亭「辻留」で会食をした事がある。その時にビルは「僕はアメリカ
の大統領選挙に出たいと思っている」と話してくれた。もう20年以上も昔の秘密の会
話であった。ビルは、民主党支持であった。
トランプ氏が大統領に再選された。欧米の私の友人、主に官僚系や学者系なのだが、
「ショック」といったメールが次々に来る。私の友人は、いわゆる「エリート系」なのだ
が、今回は「大衆の勝利」という事だろう。つまりコロナ禍以降の世界経済の低調と物価
高が背景にあり、グローバリズム(政治経済)に対する反感とimmigrant(移民)に対す
る差別感情もあっただろう。しかしながら、よく考えて欲しいのは人類の歴史を3千年も
たどれば「グローバリズム」と「移民」(人類の大移動)の歴史であって、何も、今日的
な新しい問題ではない。では何が「今日的な問題」なのかを友人たちに返信メールした。
The problems that the world faces include poverty, disputes and global
warming.
アメリカ(USA)だけでも約4700万人が経済的な困難に陥っているという、恐るべきデ
ータがある。(The U.S. Census Bureau より参考)。
以前、『現代用語の基礎知識』に「Hope is the poor man's bread」(希望は貧乏人のパン)という事で、第二次世界大戦後にヨーロッパに散在したドイツ人が、ポーランドやチェコの人々によって苛烈な暴力に直面した事を書いた。大戦中、ナチスはヨーロッパ全土を事実上支配下に置いた。その勢いでドイツ人がヨーロッパ諸国に移住したが、ナチスが戦争に敗れ、大戦後は移住したドイツ人は、本国に強制的に送還された。そのときに使用された列車は、ユダヤ人を大量に詰め込んだ車両が使用されたという(ポーランドの例)。
アウシュビッツに代表されるユダヤ人への大量虐殺も、人類の悲しむべき悲劇なのだが、
同様に戦後のヨーロッパでは、移住したドイツ人に対する暴力や虐殺もあった。
貧困は人間をあっという間に、残忍な動物にしてしまう。最近の日本での「闇バイト」も
同じことだろう。国民民主党の選挙結果も、そうかもしれない。
トランプ氏の勝利という事は、私の友人たちのエリート諸君には、頭で理解できても大衆の
貧困という視点で見れば、Kamala Harris 副大統領も含めて大衆の貧困化を理解できていなかったのだろう。そしてバイデン大統領の4年間が無策であったともいえる。
ショックといえば、駐日アメリカ大使のRahm Emanuel も次の職探しに忙しいらしい(笑い)。エマニュエル大使は、日本の政治に介入し過ぎというか「内政干渉」(interference
in domestic affairs )も酷かった。まったくaffairs(事件)といっても良いくらいで、
日本の首相選挙に介入し過ぎだろう❕
「民主主義よりもパンなのだ」(It's more bread than democracy)。
さて、人類は「資本主義経済」に代わりうる経済制度を”発明”しなければならない。
大げさに言えばトランプ氏の勝利は、資本主義経済の行き詰まりなのだろう。
民主党の重鎮、Bernie Sanders (83歳)の名言を書いておきましょう。
It should come as no great surprise that a Democratic Party which has abandoned working class people would find that the working class has abandoned them. While the Democratic leadership defends the status quo, the American people are angry and want change. And they’re right.
(11月7日のTwitterより)
●「論文8」(海外の大手通信社、新聞、学術誌、雑誌等に発表した私の小論文
原 題:L'essence de la rationalite est la preservation
des especes.
英語版:The essence of rationality is the preservation of
species.
論文の主題:「新 理性と存在」の続編を執筆中だが5年以内で完成させたい。
(いまだに未完成の論文。今回は、理性の発生論)。
「国際政治」について。読者から「なぜ専門外の国際政治の記事を書くのか?」と
問い合わせが多かったので、回答します(笑い)。
そもそも若かりし頃(笑い)、毎日、フランスの大学院で論文ばかりを読んでいて
(主にサルトルの論文)疲れていたので、書店でフレデリック・フォーサイスの(英
語版、当時は日本語版を入手するのは困難だった)小説を読んでいた。すっかりこの
著者にはまったので、ほとんどの本を読んでいる。日本に帰国して、翻訳者の篠原慎氏
と紀伊国屋書店(新宿)の喫茶室でお会いして、「原作よりも篠原さんの翻訳が素晴ら
しい」と感想を述べた。篠原さんは「フォーサイスはジャーナリストですから、文章が
記者のような書き方ですね」と。私は「国際ミステリー」に魅せられ、ブライアン・フ
リーマントル等の作者の著書を好んで読んだ。この読書の志向(嗜好)が国際政治に
興味を持つきっかけです。特に情報の収集方法が大切と思っています。
★「Memoir」
歴史学者(元東大教授)の伊藤隆氏が8月19日に亡くなった。(91歳)。
私は彼の授業を受けてないが、近年の彼の政治的な発言には強く非難してきた。
学者はあくまでも「科学的な思考」で研究すべきであり、内心の自由は別として
極端な政治的な発言は学問の主旨に反するからである。
初めて明かすが、作家の三島由紀夫とも「論争」したし、活動家の小田実とも明治学
院大の教室で論争した。彼らは作家であり活動家であるから自らの政治的なイデオロ
ギーを主張するのは当然だ。学者というのは「右」や「左」のイデオロギーを世に問
うのが仕事ではない。学問的な研究成果を発表するのが仕事だ。学問というのは、政
治的なイデオロギーのバイアス(先入観や偏見)が入ると、主題の本質から大きくズ
レるからである。
私の個人的な感想だが、三島由紀夫は政治的な挫折というより「文学的な挫折」で自
死したのではないかと思っている。いつの日か、この理由を書く時があるだろうか。
「音楽プロデューサー」の酒井政利氏(令和3年 逝去)は、日本を代表する著名な人
であった。私が若い頃にアイドル歌手と知り合ったり、その歌手の著書のシャドーラ
イターであったのも酒井政利氏の紹介である。(若い頃は、原稿依頼は来るもの拒ま
ずの精神で書きまくっていた)。
酒井氏といえば「帝銀事件」で死刑判決を受けた平沢貞通の息子ではないかと、真相
は今日まで謎となっている。ある時、遠慮なく何でも聞く性格の私は、「酒井さんは
平沢氏の本当の息子ですか?」と聞いた。
酒井氏は、厳粛な顔で「頷いた」。多分、彼自身も証拠になるものは(遺伝子検査)
無かったが、人生の晩年で自分のアイデンティティなり、ルーツに決着をつけたのだ
ろうと思う。そして、平沢の子供として、受け入れる覚悟が出来たのだろう。この問
題は「帝銀事件」同様に長い間の「戦後史の謎」であったが、少なくとも酒井氏は、
私に平沢の子供であると同意した。
★『クラシック音楽考』★
久し振りにフランスのポップスで懐メロを聴いた。「Belle Notre Dam de Paris」
なのだが ヴィクトル・ユーゴーの小説のミュージカルの中から Belleという曲。
お勧めは三人の男性歌手(ガルー、ダニエル・ㇻヴォア、パトリック・フィオーリ)
フランスでは大ヒットで、コンサートも満員。私がフランスに住んでいて、大人社会
と思う理由でもあるのだが、、、。フランスに帰るとホッとする。合理的で冷たい印象
のフランス(パリ)かも知れないが、住んでみると”干渉されない自由”というか。
疲れて帰宅して、マーラーの5番やシベリウスの2番を聴くのだから、まだ元気なの
かもしれない。(笑い)
気に入りのソファーに座り「誰とも口を利きたくない」気分で、音量を高めにして聴
く。
最近は、ショパンの「名曲24選」を流しっぱなしにして、仕事の事を考えている。
私は性格的に引退はないと思っている。死んだ時が引退なのだと思っている。
私の周辺には引退して気ままに生きている人を何人も知っているが、私は身体と頭脳
が動いている限り、働く運命のようだ。しかしながら頭脳は、働きに切れがない(笑
い)。
癒しの曲には、何曲か好きな曲があるが、フリードリッヒ・ヘンデル(1685~1759)
の「パッサカリア」(Passacaglia)は最高だと思う。音大卒の友人なら全員が知ってい
る曲なので、有名な名曲(原曲はバッハ)。ただ、この曲を弾くピアニストというと強
いこだわりがあり、Alexander Motovilov が私の好みだ。このピアニストのテンポで
ないと満足できない。